【個人所得税(PIT)】とは?|ベトナム進出後の実務で役立つビジネス用語解説
- k.nuisach

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ベトナムの個人所得税(PIT:Personal Income Tax)は、個人の所得に対して課される直接税です。日本の所得税と同様に、給与所得や事業所得など様々な所得が課税対象となります。
最大の特徴は、「居住者」か「非居住者」かによって税率と計算方法が大きく異なる点です。2026年1月1日からは税率構造が7段階から5段階に簡素化されるなど大きな制度改正が行われており、駐在員を含む実務担当者は最新の知識を持つことが不可欠です。
ベトナムにおける個人所得税の意味合いや特徴
ベトナムの個人所得税は、納税者を「居住者」と「非居住者」に区分し、それぞれ異なるルールを適用します。
居住者と非居住者の判定
以下のいずれかの条件を1つでも満たす個人は、ベトナムの税法上「居住者」と見なされます [1]。
滞在日数基準: 暦年(1月1日~12月31日)または入国日から起算した連続する12ヶ月間のいずれかの期間において、ベトナムでの滞在日数が合計183日以上であること。
恒久的住居基準: ベトナムに恒久的な住居(賃貸住宅の長期契約など)を有すること。
駐在員の場合、通常は恒久的住居を持つため、滞在日数が183日未満であっても居住者と判定されるケースがほとんどです。
2026年からの新しい税率(5段階累進課税)
2026年1月1日より、改正個人所得税法(法律第109/2025/QH15号)が施行され、累進課税の構造が7段階から5段階に簡素化されました。中間所得層の税負担軽減が主な目的です [2]。
課税区分 | 月次課税所得(VND) | 年次課税所得(VND) | 税率 |
第1区分 | 1,000万以下 | 1億2,000万以下 | 5% |
第2区分 | 1,000万超〜3,000万 | 1億2,000万超〜3億6,000万 | 10% |
第3区分 | 3,000万超〜5,000万 | 3億6,000万超〜6億 | 20% |
第4区分 | 5,000万超〜1億 | 6億超〜12億 | 30% |
第5区分 | 1億超 | 12億超 | 35% |
(旧制度では最高税率35%の適用が月次8,000万VND超からでしたが、新制度では1億VND超に引き上げられました。)
2026年からの扶養控除額の変更
扶養控除額も同時に引き上げられました [2]。
控除の種類 | 2025年まで | 2026年から |
本人控除 | 1,100万VND/月 | 1,550万VND/月 |
扶養家族1人あたり | 440万VND/月 | 620万VND/月 |
扶養家族として認められる主な対象は、18歳未満の子供、就労困難な配偶者、所得が少ない親・祖父母などです。
非居住者への課税
非居住者(ベトナム国内での滞在が183日未満かつ恒久的住居なし)は、ベトナム国内で発生した所得に対して一律20%の税率が課されます。原則として控除は認められません。
福利厚生への課税(日本との大きな違い)
日本では非課税となることが多い福利厚生の一部が、ベトナムでは課税対象となる点に注意が必要です。特に、会社が負担する駐在員の家賃は、総支給額の15%を上限として課税所得に含めなければなりません。
また、会社が提供する送迎車や海外医療保険の費用も、一定条件下では課税対象となります。
結論
ベトナムの個人所得税は、居住者・非居住者の判定がすべての基本となります。特に外国人駐在員の場合、この判定を誤ると納税額に大きな影響が出ます。
また、2026年からの税率改正により、多くの従業員の手取り額が変化するため、給与計算システムや社内規定の更新が急務です。
日本とは異なる課税対象(特に福利厚生)や頻繁な法改正があるため、常に最新の情報を入手し、専門家のアドバイスを受けながら適切に対応することが、税務リスクを回避する上で極めて重要です。
専門家が解説!ベトナム労務の落とし穴
ベトナムの個人所得税(PIT)で特に注意が必要なのが、駐在員向けの福利厚生の扱いです。会社が負担するアパート代(水道光熱費含む)、送り迎えの車代、海外健康保険などは、税務上、個人の課税所得とみなされる可能性があります。
特に所得の大きい現地代表者などは税務調査の対象となりやすいため、これらの費用は個人所得として適切に管理し、いつでも提示できるよう専用のファイルにまとめておくことをお勧めします。
税務調査では、経費の正当性が厳しく問われます。例えば、「出張時の航空券代は本当に業務のためか?」といった指摘を受けることもあります。
こうした疑義を晴らすためには、出張規程や報告書といった文書を整備し、その支出が業務に関連するものであることを客観的に証明できるようにしておくことが不可欠です。
また、給与や賞与の支払いにおいても、その根拠となる文書の準備が重要です。給与であれば労働契約書、賞与であれば賞与決定書など、支払いの正当性を示す書類を事前に作成・保管しておきましょう。
特に、マネージャーや駐在員など、特定の従業員のみを対象とする福利厚生については、「なぜその人たちだけが対象なのか」を合理的に説明できる文書がなければ、個人所得税の対象外と認められない可能性があります。

実務担当者向けの重要ポイント(注意点)
居住者判定の正確な理解: 「183日ルール」は、暦年と連続12ヶ月の2つの基準があることを正確に理解してください。赴任・帰任のタイミングによっては、課税年度の区切りが複雑になるため、専門家への確認が推奨されます。
福利厚生の課税管理: 現地代表者や駐在員については、アパート代(水道光熱費含む)、送迎車代、海外健康保険料などが課税所得に含まれるかどうかを個別に確認し、1人ひとりの課税所得を正確に把握したファイルを管理しておくことが重要です。特に所得の大きい現地代表者は税務調査で重点的に確認されやすい傾向があります。
出張経費の文書化: 税務調査では「出張時の航空券代は業務目的か個人目的か」といった確認が行われることがあります。出張規定や出張報告書を整備し、業務に関わる支出であることを証明できる文書を準備しておいてください。
給与・賞与の根拠書類の整備: 支払いが「給与」であれば労働契約書、「賞与」であれば賞与決定書など、支払いの根拠となる書類を事前に整備してください。書類の裏付けがない支払いは、税務調査で問題となる可能性があります。
2026年改正への対応: 新しい税率・控除額は2026年1月1日から適用されています。給与計算システムや社内規定が新しい税率に対応しているかを確認し、必要に応じて更新してください。
参考文献
[1] JETRO. (2025, September 12). 税制 | ベトナム - アジア - 国・地域別に見る. Retrieved from https://www.jetro.go.jp/world/asia/vn/invest_04.html
[2] VinaTPT. (2026, January 1). How to Calculate Personal Income Tax 2026 in Vietnam. Retrieved from https://vinatpt.com/how-to-calculate-personal-income-tax-2026-in-vietnam/
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