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ベトナム税務調査の流れと事前準備を徹底解説!立会調査後の対応や経理スタッフの人事評価も

  • 執筆者の写真: k.nuisach
    k.nuisach
  • 2024年11月20日
  • 読了時間: 14分

更新日:5月7日


前回の記事では、「ベトナム税務調査の基本と心構え」と「リスクが高まる企業の特徴」について解説しました。本記事では、実際にベトナムで税務調査が入ることが決まった際の基本的な流れおよび必要な準備・対策について解説します。



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【目次】



税務調査に向けた事前準備(資料とデータ)


事前準備において最も重要なのは、常日頃から経理・人事業務が税務調査に対応できる体制になっているかどうかです。調査の決定通知が届いてから立ち合い調査までにどれだけ準備を進められるかも大事ですが、普段から社内でしっかりと税務調査に対応できる体制が整っていることが全体の7~8割を占めると言えます。


書類の準備と管理体制


書類の準備では、以下の書類が社内で適切にファイリングされていること、またファイリング作業も経理・人事スタッフの業務の一環として認識していることが重要です。


  1. 経理関連の書類  

    • 契約書、注文書、発注書、見積書、納品書/完了証明書、e-invoice など


  1. 補足説明資料 

    • 固定資産一覧、借入管理表、買掛管理表、売掛管理表


  1. 人事書類  

    • 勤務カレンダー、就業規則、社内規定各種(残業規定、賞与決定書、労働契約書など)


書類を保管する際には、以下の点に留意します。


  • 書類保存の形式:箱またはファイルなど

  • 書類の保存場所:社内の書棚

  • 書類保存のルール:分かりやすいナンバリング、経理データの摘要の工夫


経理資料は経理部門だけが集めるものではなく、社内の全部門から必要な資料が一元的に経理部門に集まる仕組みが求められます。


例えば、営業部門が経理への最終見積書の提出を怠るたびに経理が催促を行ったり、調達部門に対して発注書や納品書、e-invoice、見積書などの購入関連書類の提出を逐一求めなければならない状況では、手間と時間が増えてしまいます。こうした無駄を防ぐため、事前に“社内ルール”を設定することが重要です。


特に支払いに関しては、必要な経理書類一式が揃わない場合には支払いを行わないという明確な支払いルールを設けることも有効な方法の一つです。

経理書類の保存例
経理書類の保存例

データの準備と管理体制


  1. 経理データ

    • 会計データ、月次/年次の決算データ、個別計算データ、売上原価と販管費割合の根拠、借入金管理表、工場賃料の支払い管理表など

  2. 人事データ

    • 給与計算データ、社会保険料の計算データ、就業規則、社内規定、労働契約書など


加えて、データ保存の際には、適切な保管場所やルールの統一が必要です。


  • データ保存の形式:Excel、PDF、Word など

  • データの保管場所:社内サーバー

  • データ管理のルール:誰が見ても一目で分かるようにタイトルやフォルダ構造を工夫(フォルダ階層、フォルダ名、格納するデータなど)


データ管理のフォルダ構造の例
データ管理のフォルダ構造の例

重要な経理・人事データは、担当者のパソコン上ではなく社内の共有サーバーに保存することが推奨されます。最初に適切なフォルダ構造を作成し、経理・人事の最終データは指定の場所に全て保管するルールを定め、これらの管理作業もスタッフの業務の一環として明確に位置づけておくことが重要です。


税務調査ではまず関連取引データの提出が求められるため、最終データがどのフォルダにあるかを明確にしておけば、迅速な対応が可能になります。また、現地管理者が定期的にそのフォルダを確認することで、担当者が適切に業務を遂行しているかどうかも確認できます。


特に、本社経理と連携した現地の経理・人事業務の管理体制を目指す企業にとっては、このような仕組みが非常に有効です。


理想の状態は、即座に資料を提示して説明できること


「特定の取引について経理担当者に質問した際、担当者がすぐに資料を提示し、説明できる状態を作り上げること」が書類とデータ管理の最終的な目標となります。これは、調査時に調査官から同様の対応を求められるためです。


例えば、現地管理者が経理担当者に以下のように依頼するケースを考えます。

「自社の3ヶ月ごとのレンタル工場賃料の支払い履歴と支払い管理表のデータを全てメールで提出してください。その後、契約書ファイルを持参し、直接説明してください。」

この依頼に対し、経理担当者が迅速に準備し、説明できるでしょうか?会計ソフトでは管理が難しいデポジットの詳細、3ヶ月ごとの支払い履歴、契約書、賃料変更に伴う付録の契約書などが一覧で把握できる補足資料が用意されており、その資料の基となる経理書類(原本)がすぐに取り出せる状態が整っていれば、経理担当者は日々の業務を適切に遂行していると判断して良いでしょう。



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基本的な流れと立会調査日に向けた準備


まず調査の通知を受けたら、立会調査日を調整し、調査官からの要請に基づいて事前に必要な経理データを提出します。印刷した書類や資料を事前に準備しておくよう、調査官から個別の指示を受けることもあります。不備なく適切に対応するためには、立会調査日までにいかに根拠となる資料を準備できるかが重要です。


調査の一連のスケジュールを可視化する


Excelで調査対応手順やスケジュールを一覧化することで、調査の進捗を把握しやすくします。特に、現地管理者も確認できるよう、常に最新の状況を反映することが重要です。以下に、VAT還付の手順とスケジュール管理表の例を示します。

スケジュール管理表の例
スケジュール管理表の例

立会調査日に向けた準備


立会調査日に向けて、立会調査期間中の打ち合わせ場所や会議室等の確保、打ち合わせ場所への経理資料の運び込み、事前に調査官から指示のあった資料の準備をします。また、調査官の送迎や昼食も管理し、期間中の配車の手配等々の事前準備も必要となります。


さらに、当日は会社側の経理処理について根拠法令を示した上できちんと説明したり、そのために追加の補足説明資料を作成したりする必要があります。調査官からの追加質問に対し、補足資料をその場で作成して提供できる準備も重要です。


予め調査官から要求され、会議室に準備した取引の原本
予め調査官から要求され、会議室に準備した取引の原本

立会調査時の社内の対応体制


調査官が2名で来られた場合、以下の体制が理想的です。


調査官2名に対する対応役割と人数


  1. 主担当調査官対応兼調査進捗管理係:1人  

    • 役割:主担当調査官の質問に対応し、詳細な説明を行う。また、各調査官からの依頼事項や調査全体の進行状況を把握する。

  2. 副担当調査官対応:1人  

    • 役割:副担当調査官の小規模な依頼や要求に迅速に対応する。

  3. サポート役:1人  

    • 役割:コピーの作成やデータの提出など、上記2人のサポートを行う。


調査期間や対象の取引量に応じて異なりますが、調査官が2名以上の場合は、チーフアカウンタントが主担当調査官に対応するため、社内で2名以上の対応者を準備しておくのが望ましいと言えます。


万が一、社内対応者が1名しかいない場合、多数の調査官がいるにもかかわらず資料提示に手間取ったり、相手を待たせるような状況が生じると、会社として経理部門が適切に機能していない印象や、意図的に時間を引き延ばしているとの誤解を与える可能性があります。これは不合理な要求が発生する原因にもなりかねません。


あらかじめ現地管理者が経理スタッフと対応体制についても打ち合わせをしておくことをお薦めします。上記の体制を整えることで、調査官からの質問や要求に迅速に対応でき、調査の進行がスムーズとなるでしょう。


立会調査時の経理スタッフの業務調整


特に立会調査期間中は、経理スタッフが税務調査の対応に集中できるよう、日常業務の調整を事前に行う必要があります。例えば、業者への支払い日の変更や現金払いの日程調整などを検討します。また、調査対象取引が多く、立会調査前から多くのリクエストが出ている場合は、現地管理者がフォローすることが重要です。


調査期間中に経理スタッフが十分な対応時間を確保できるかどうか(反論や抗弁の準備ができるかどうか)によって、数十万~百万円程度の追徴課税や罰金が発生するリスクが変わることもあります。そのため、調査官が来訪している間は、経理スタッフの通常業務を上手く調整することをお薦めします。


伝統的な手数料に対する会社のスタンス


伝統的な手数料について、支払うか支払わないか(=徹底的な抗弁と交渉)を事前に会社として明確に決めておくことが望ましいです。この判断を経理担当者に事前に伝達しておく必要があります。経理担当者が対応経験を有している場合、適切なタイミングや金額についても事前に相談が可能になります。


経験豊富な担当者であれば、否認されやすい部分の妥協点を設定し、その方向に交渉を誘導しつつ合意に至るまでをカバーしてくれるでしょう。



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税務調査終了後の対応|追徴課税や罰金の決定が出た後にやること


立会調査が終了した後も、調査官から追加の資料が求められることがあり、それに応じる必要があります。ある程度の指摘内容が固まると、ドラフトの決定書が提示され、その後に交渉を経て最終的な決定書が出されます。最終決定に基づき、追徴課税や罰金を支払い、経理処理に必要な修正を加えます。


税務調査後の社内改善


税務調査後は、以下の点を現地管理者と経理スタッフがしっかりと確認し、今後の対策を講じることが非常に重要です。指摘内容を反映した社内改善策を検討し、日常業務にまで落とし込めると理想的です。


  1. どのような部分に説明が必要だったのか

    • 注意を受けた部分、調査官への説明が難しかった部分、対応が困難だった部分について確認します。


  1. どの部分が否認されたのか、または指摘を受けたのか(決定書に基づく内容)

    • 指摘された箇所に対して、今後の経理業務および社内全体を巻き込んだ対応方法を確認します。

例:税務調査官からの指摘内容

  • テト賞与の計算方法が社内資料に記載されていなかった。


会社の対策

  • 計算方法に関する社内規定を作成し、年度ごとに変動する要素については賞与決定書を毎年作成し、社内で保管する。

これらの取り組みによって、現地管理者と経理スタッフ間で課題と対策の共通認識が生まれ、スタッフのスキルアップにつながります。また、会社としても税務調査に対応できる仕組みを構築するための一歩となります。


経理スタッフの人事評価と育成


税務調査対応に取り組んでくれたスタッフへの評価


経理担当者にとって、税務調査対応は非常に大変な業務ですが、社内でその重要性を理解されず、評価を得ることが難しい場合があります。


経理スタッフが追徴課税や罰金を大きく減らす努力をしても、その功績が明確に認識されることは少なく、その貢献に対する社内評価制度を作るのも難しいのが現実です。たとえ追徴課税や罰金が減ったとしても、スタッフには残業代程度の報酬しか支払われず、逆に追徴課税や罰金が大きくても本人の給与に影響することはほとんどないと言えます。


また、調査対象期間と自分の担当期間がぴったり重なることは少ないため、責任の範囲が曖昧になりがちです(設立時から担当していない限り、前任者の担当した部分も引き継ぐことになります)。この点をどのように管理するかは、管理者にとって悩ましい課題です。


VAT還付の税務調査であれば、全体の流れや還付額が明確に把握できるため、経理スタッフの手順や事前準備、決定書の内容に対する対応を評価し、特別賞与の形で報いることも一つの方法と言えます。



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現地管理者によるフォローと、全社的な仕組み構築の必要性


特に、現地管理者が税務調査の内容を把握しておらず、経理担当者をサポートできない場合も多いと言えます。このような場合、担当者は「会社のために一人で頑張る必要があるのか」という気持ちにもなりかねません。


その結果、経理担当者は責任を抱え込む一方で、努力が評価されることも少なく、モチベーションの低下につながります。最終的には調査官の主張をそのまま受け入れ、会社として言われた金額を支払うしかない状況に追い込まれるケースが多々あります。


特に、多額の追徴課税や罰金が科せられた際、経理担当者のみの責任とすることはお勧めできません。なぜなら、税務調査対応には経理担当者一人でカバーしきれない多くの要素が含まれており、会社としての対策が整っているか、担当者の業務範囲として明記されているか、フォロー体制が整っているかも重要なポイントだからです。加えて、調査官によって注目する点や根拠となる法令も異なるため、対応の難易度が増します。


日々の取り組みから調査対応、改善に至るまで、非常に難しい業務です。だからこそ、同じ追徴課税や罰金が再度発生しないよう、全社的な仕組みやルールを整備し、前向きに取り組むことが重要です。


税務調査に対応できる経理スタッフは育てるしかない


ベトナムにおいて、ある程度の売上規模と従業員数を持つ外資企業で、税務調査対応の経験がある方は多くないと思われます。税務調査に対応できるかどうかは、その方のやる気や会社の体制によっても差が出るため、単に「外資企業での経理経験があり、税務調査対応を経験している」というだけでは十分ではなく、内容を深く掘り下げる必要があります。


事前準備を行い、調査官への抗弁や交渉、さらには社内改善案の立案から実行まで対応できる人材は限られています。そのため、自社内で税務調査に適切に対応できるスタッフを育成し、対応の仕組みを整備していくことが不可欠だと言えるでしょう。


事前準備や抗弁を怠らず、しっかりと税務調査の対策を取ってくれる経理スタッフがいる場合、その存在を大切にすることが重要です。向上心のあるスタッフであれば、このような経験を深く理解し、これからも懸命に取り組んでくれるでしょう。


税務調査をきっかけに、企業の成長へと繋げましょう


本記事では、税務調査の基本的な流れと当日までの準備、調査後の社内育成についてお話ししました。税務調査対応は、経理担当者一人の業務として対応するものではなく、会社全体で正しい認識と意識を持って地道に取り組むことが重要です。こうした対策は、税務調査が入った際に「やっていて良かった」と実感できるものであり、単なるリスク管理にとどまりません。


税務調査対応のための細かな業務が増えることに抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、取引履歴や原本データ、補足説明資料がすぐに提示できる状態を整えることで、受注金額の見直しや案件ごとの原価分析、特定業者への支払いや費用内容の精査が可能になります。これにより、数値的な根拠に基づいた強固な企業体制が築けます。


さらに、見積分析や原価管理ができることで、親会社以外の他社からの受注も受けやすくなり、売上拡大のチャンスを掴むことができます。税務調査対策には、こうしたプラス面が多く含まれているため、手間や細かさに対して拒否反応を示すのではなく、前向きに取り組むことをお薦めします。



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<次回>

ベトナム税務調査対策を見据えた組織・仕組み作りとは?経理の内製化のメリットを解説 Vol.4


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