「人件費が安い国」という幻想にご用心!ベトナム進出前に知っておくべき人件費戦略のリアルとは
- k.nuisach
- 4月28日
- 読了時間: 12分
更新日:5月7日

「ベトナムは人件費が安いから進出すればコストが下がる」——
そんなイメージをいまだに持っていませんか?
確かにかつてのベトナムは、低コストな労働力を背景に日本企業から注目されてきました。しかし現在では、賃金は年々上昇し、福利厚生の拡充や人材獲得競争も激化。もはや“安さ”だけを理由に進出しても、思うようなメリットが得られない時代に入っています。
本記事では、実際の給与相場や昇給傾向、現地採用のポイント、地方進出の落とし穴まで、進出前に必ず知っておきたいベトナムの人件費事情を網羅的に解説します。将来の組織設計や事業計画に直結する情報を、ぜひご活用ください。
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【目次】
人件費が安いだけの時代の終わり

かつてのベトナムは「人件費が安く、物価も安い国」として、日本企業にとって魅力的な進出先とされてきました。しかし現在では、単に“安さ”だけを理由に進出するのは、もはや通用しなくなりつつあります。
多くの日本人の中には、ベトナム=人件費の安い国というイメージがいまだ根強く残っており、地域ごとの最低賃金や平均給与を見ても、「まだまだ日本に比べて安い」と感じる方も少なくありません。
たしかに月収ベースで比較すると、表面的には日本より低く見えることもあります。しかし、実態は数字以上に大きく変化してきており、そのギャップに気づかずに進出すると、思わぬコストや人材確保の難しさに直面するリスクがあります。


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賃金上昇と福利厚生の拡充が進むベトナムの実情

理由1:毎年続く賃金の上昇
ベトナムでは、ここ数年にわたり年率5〜6%のペースで賃金が上昇しています。それに伴い、日系企業も社員の昇給を定期的に実施しており、給与水準は確実に底上げされています。
理由2:給与以外の支払いと福利厚生の充実
ベトナムでは給与に加えて、テト(旧正月)ボーナスとして約1ヶ月分の賞与を支給する企業が一般的です。さらに、皆勤手当や勤続年数に応じた報奨金を導入している企業も増えてきました。
また、福利厚生面でも充実が図られており、以下のような制度を導入する企業が目立ちます。
社員旅行や社内イベントの開催
任意の民間健康保険の加入支援
日本本社への研修制度の整備
このように、「選ばれる企業」を目指して各社が環境整備に力を入れており、もはや企業側が人材から選ばれる時代になっていると言えます。
一見、最低賃金や平均月収の数字だけを見ると「まだ安い国」という印象を持ちがちですが、実際には役職ごとの昇給幅も大きく、企業側が人材確保のために給与・福利厚生の両面で競争を強いられているのが現状です。
ハノイやホーチミンといった大都市を訪問すれば、その都市の発展スピードと人件費の高まりにきっと驚かれることでしょう。「賃金の安い国」という旧来のイメージを、一度リセットする必要があります。
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具体例でみる役職別の想定月給

ここでは、以下のような前提条件のもとで、各役職の月給相場を考えてみます。地域や業種によって差はありますが、全体像を把握するための参考となります。
日本本社:中小企業
業種:製造業
従業員数:80名以下
進出地:ホーチミン近郊

作業員・リーダー
まず現場の作業員に関しては、地域や近隣工場の給与水準に準じているケースが多く、大きな開きは見られません。一方、リーダー層に関しては、人材の採用方法によって月給が変動します。
社内から選抜した場合(社内昇格)
経験者を外部から採用した場合(即戦力)
この違いにより、給与水準には差が出る傾向があります。
専門職人材(経理・人事・通関担当など)
専門職についても、その経験値や資格保有の有無によって大きく金額が異なります。
新卒・未経験
有資格者(例:チーフアカウンタント)
他社での実務経験者
ベテラン人材
どの人材層を採用するかにより、提示すべき給与も変わってきます。
管理者クラス(ローカルマネージャー・日本人駐在員)
管理者層についてはさらに幅があります。
ベトナム人管理者(現地採用)
日本人管理者(現地採用)
日本本社からの出向・駐在員
特に日本本社からの駐在・出向者を配置する場合は、給与以外にも様々な費用が発生します。
たとえば、
個人所得税(駐在員本人に代わって企業が負担)
家賃・社宅手当
海外旅行保険・健康保険
労働許可証・居住許可証の取得費
一時帰国用の航空券 など
これらを含めると、実質的な人件費は現地ローカル人材の数倍になることもあります。
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給与を考える際の3つの重要な視点

ポイント1:現地法人の“将来ビジョン”を描くこと
給与設計の前提として重要なのが、「本社から見たベトナム現地法人の将来像をどう描くか」という点です。
たとえば、若手人材を中心とした柔軟な組織を育てたい場合、現地採用の若い管理者を中心に、10年〜20年のスパンで組織成長を見据えた給与レンジを設定する必要があります。
一方で、安定した事業運営や品質管理を重視する場合は、経験豊富なベテラン人材を初期から登用し、相応の給与を提示することで、確実な基盤づくりが可能になります。本社の平均年齢や採用方針も大きく関わってきます。
たとえば、
本社の高齢化に伴い、ベトナム現地法人を20〜30代中心の若手育成拠点としたい
優秀な現地社員を将来的に日本本社に送り込み、グローバルな幹部候補として育成したい
こうした長期的な人材戦略を前提とした給与設計こそが、組織全体の方向性と調和した運営につながります。
ポイント2:個人より組織全体から設計をはじめる

給与設計においては、いきなり「このポジションにいくら払うか」から考えるのではなく、まずは組織全体をどう設計するかを先に検討することが重要です。
ステップとしては以下の流れが効果的です:
必要業務の棚卸(業務リストアップ)
必要な部署・担当者の構成を検討
各ポジションの業務範囲と役割に応じた給与を仮設定
募集要項・採用計画の作成
例えば経理部門の場合、以下のような設計が考えられます。
チーフアカウンタント資格を有し、申告・納税業務までカバーできる人材を1名配置
現場の経理スタッフ1名に業務を分担
外部サポート会社の活用も組み合わせて2名体制で運営
そのうえで、他部門の責任者との給与バランスも考慮し、全体として破綻のない人件費構成を目指します。
優秀な人材1名に頼り切った採用を行うと、社内の給与格差が大きくなったり、他業務の遂行が滞るといったリスクも生じかねません。まずは組織全体から逆算する発想が不可欠です。
ポイント3:昇給の設計は進出前に済ませておく
ベトナムでは、毎年昇給するのが一般的です。そのため、各ポジションが毎年どれくらい昇給するのか、進出段階であらかじめ賃金テーブルを作成し、事業計画に反映させておくことをおすすめします。
このシミュレーションには以下のメリットがあります:
実際の運営開始後に急な給与調整に追われずに済む
昇給基準・評価制度のたたき台としても活用できる
とくに進出前の準備期間は最も時間が取れるタイミングでもあるため、ここでしっかりと将来を見越した設計をしておくことで、より現実的で持続可能な人件費管理が実現します。
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日本本社で雇用されていたベトナム人を現地で採用する際の注意点

日本で技能実習生や研修生として勤務していたベトナム人を、帰国後に現地採用するケースは年々増えています。日本語が堪能で、日本式の業務にも慣れており、企業にとって即戦力と映ることが多いためです。
しかし、このような人材をそのままの給与水準で採用する場合には注意が必要です。
ポイント1:社内の給与バランスが崩れるリスク
日本で支払っていた給与をそのままベトナムで適用してしまうと、同じ作業員なのに給与が3倍以上違うといった事態が起きかねません。これにより、既存の現地スタッフとの間に不公平感や不満が生じ、社内の士気低下や離職リスクを招く恐れがあります。
こうした場合には、以下のような対応が有効です。
高めの給与を設定する際には役職や職務の範囲を明確化し、他の社員との“待遇の違い”を説明可能な状態にする
期待する能力や成果目標を明示し、納得感のある評価基準を整える
ポイント2:管理職への登用には慎重な判断を
とくに、元実習生を現地工場の管理者や代表者として起用する場合には、さらに慎重な見極めが必要です。
日本では真面目に業務をこなしていたとしても、現地では以下のような新たな役割が求められます。
複数のスタッフをまとめるリーダーシップ
製造工程の管理や納期対応
トラブル発生時の判断と対応
顧客や本社との報告・連携業務
こうしたスキルは現地で実際にやってみて初めて評価できるものです。
そのため、
一定期間の見極め期間(トライアル期間)を設ける
必要に応じて専門家の指導や本社からの支援体制を整える
管理者としての適性が確認できた段階で、正式に登用する
といった段階的なアプローチが、企業と本人の双方にとって安心です。
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安い賃金を求めて進出する場合の注意点

ベトナムにおいては、ホーチミンやハノイなどの都市部から離れた地方に進出することで、人件費を大きく抑えることが可能です。そのため、コスト削減を目的に地方進出を検討する企業も少なくありません。
しかし、「安さ」だけを優先すると、思わぬ課題に直面するリスクがあります。特に以下のような点には十分な注意が必要です。
地方進出に伴う主な課題
専門職・管理職人材の確保が難しい
地方では、高度なスキルやマネジメント経験を持つ人材が限られており、採用が困難です。
日本人管理者の居住が難しい
言語の壁や生活環境の未整備により、日本人駐在員が住みづらい地域も多くあります。
地方進出後、都心移転時に従業員がついてこないリスクがある
地方に進出した後、さらに別地域(都心)に工場やオフィスを移転する場合、会社としては地方で働いていた従業員がそのまま新しい拠点に移ってきてくれることを期待します。しかし、家族の事情や通勤負担などにより、従業員が転勤を拒否し、退職してしまうケースも少なくありません。この場合、新たに人員を採用・教育し直す必要があり、それまで培ってきた人材の蓄積や組織力がリセットされるリスクが生じます。
港や空港へのアクセスが悪い
出荷や調達の物流に時間がかかり、生産・納期管理に影響することも。
調達先・外注先の選択肢が少ない
必要な部材や外注業者が見つかりにくく、都市部に比べ柔軟な調達が難しい傾向があります。
工場訪問の利便性が低い
顧客や日本からの出張者が訪問しづらく、信頼性の構築や現場視察の機会が制限されます。
これらの課題は、特に初めて海外・ベトナムに進出する企業にとって、経営上の大きな障壁となる可能性があります。短期的な人件費メリットだけで判断するのではなく、長期的な視点で進出地の選定を行うことが重要です。
とはいえ、地方都市への進出がすべて悪いわけではありません。
たとえば、
本社の企業風土として、じっくり人材育成に時間をかける方針を持っている
コストメリットを重視しつつ、教育・定着に中長期で投資する覚悟がある
といった場合には、地方であっても企業にフィットした経営判断となる可能性があります。“安さ”を追い求めるのではなく、“何を育て、どう成長させたいか”という視点を持って進出地を選ぶことが成功の鍵です。
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進出前に「人件費の戦略」を立てよう

ベトナムの人件費は、日本と比べると依然として低水準に映るかもしれません。しかし、賃金は毎年上昇しており、最低賃金や平均月収の数字だけを見て「コストを抑えられる」と判断するのは非常にリスクの高い考え方です。
すでに多くの国・企業がベトナムに注目し、労働力や市場性を求めて進出しているなかで、現地では給与や福利厚生を含めた「魅力ある企業づくり」が重要になってきています。給与額の競争だけでなく、企業文化や成長機会、働きやすさといった要素も人材確保の鍵となります。
人件費戦略を立てる際のポイント
各担当の給与額を決める前に、まずは現地法人の将来ビジョンを描きましょう
組織全体の構成・バランスを考慮したうえで、職務と連動した給与設計を行うことが大切です
単発的な人材採用ではなく、中長期の人件費シミュレーションと昇給設計を事前に整えておくことが成功への近道です
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ベトニャットのサポート内容
Viet Nhat(ベトニャット)では、ベトナム進出を検討される企業様向けに、事業計画段階から人件費戦略をサポートしています。 具体的には、以下のようなサポートを提供しています。
各シナリオに応じた人件費シミュレーション
月額固定費(人件費含む)の年間コスト算出
職種・役職ごとの給与相場に関するご相談対応
人件費のみならず、資金管理や撤退準備まで、ベトナムビジネスの各フェーズに対応した最適なプランもご用意しています。
資金繰り表の作成や管理体制の構築を支援します。
資金状況を整理し、改善点を明確化します。
他社契約中でも、経理や税務のアドバイスが可能です。
ベトナムからの撤退に伴う手続きをスムーズにサポートします。
出張の成果を最大化するアドバイスで、進出準備を後押しします。
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